生体(いのちあるもの)を取り扱うペットビジネスにあっては流通に関わるトラブルの発生は減らす事はできても無くす事はできない。
トラブルを減らす努力と言うのはつまるところ、ブリーダー、販売業者、消費者がそれぞれの立場で、生体の特質を理解して、それぞれの責務を果す事に他ならない。
我が国のペット流通の現状は、ブリーダーと消費者の間に位置する販売業者が最も多くの利潤を得る形で定着しており、生産者としてのブリーダーの責任を云々する声は正論であってもブリーダーには届くべくもない。
ペット流通に関わる初期のトラブルの回避に最も貢献できるのは言うまでもなくブリーダーである。
繁殖台犬の選定から母体の栄養管理、離乳の時期、方法、駆虫や血統書申請など、ブリーダーが最善を尽くして作出した子犬はその後トラブルの原因になる事はほとんどない。
ブリーダーは子犬を販売業者に渡す事で、その直後の子犬の死亡すら免責されると言う現在の子犬卸しの悪慣習が諸悪の根源と言わざるを得ない。
消費者に対する保証は回避できず、ブリーダーに保証を求める事のできない販売業者の立場はきわめてリスクが大きく、流通トラブルによる損失を販売価格に転嫁せざるを得ないのである。
消費者からのトラブルは販売業者の小売値段に対応したものであって、仕入れ値段に対してではない。
仮りにブリーダーに非があるトラブルであっても、ブリーダーが消費者に対して責任を負う形になっていない。
家電製品などの場合は、いかなる流通経路で消費者に渡った場合であっても、メーカーは責任を持つ。
昨今、ペットにも製造物責任(PL法)の適用をすべきだとする活動があるが、これを実現するためにはペット流通の慣習にメスを入れなければなるまい。
欧米に於けるペット流通ではブリーダーが主導権をにぎっており、その権利相応の責任も果たしている。
ブリーダーが5万円でペットショップに売り、消費者に15万円で渡る現状と、ブリーダーが15万円で直接消費者に売った場合を比較すると、消費者に渡る値段は同じであっても子犬の質は格段に良くなるものと思われる。
命あるものの保証と言う困難な作業の当事者にふさわしいのはブリーダーなのである。
近年の法改正によって従来のような増殖のみを目指すブリーダーは淘汰される方向に向うと期待されている。
繁殖設備や密度、衛生管理などの改善のためには多くのコストが掛かるが、そのコストに見合う値段での出荷が実現されるような流通の仕組みが育たなければならない。
「生ませた人から育てる人へ」つまりブリーダー直売の実現はブリーダーにとっても、消費者にとっても、もちろん生体にとっても理想的なのである。
近年、業界や市場規模の拡大は著しいがペット流通業界内のモラルが向上したとは思えない。
動物愛護を謳いながらも、指導的な役割を果たす団体も見当たらない。
ペット販売業者を登録制ではなく許可制にすべきだと言う意見に対し「新規参入者が減るのはありがたい・・」と言うのが業界のおおかたの反応であると言うから淋しい限りである。
必ずしも欧米のやり方が望ましいとは思わないが、ペットは家電製品よりもデリケートな商材であって、流通過程の多くの時間を販売業者の陳列で過ごさせる我が国の現状では流通途上で命を落とす子犬や猫が減る事はない。
母犬の妊娠から出産、離乳の経過を身近で観察した事のある人なら、生後45日の子犬を商品として扱うのが妥当か、ショップの陳列で単独で生活できるのか、大いに危惧を抱かれるはずである。
ペット流通に関するトラブルとは言え、動物と人との間に紛争の種があるのではなく、動物を取り扱う人と人のトラブルなのである。
人と人のトラブルである以上、解決の方法はあると考えたい。
ペット流通の将来を考える時、インターネットでの情報公開の影響は大きい。
消費者の立場であっても、希望の犬のブリーダーを見つける事ができるようになり、流通相場を知る事すらできるのだ。
「生ませた人から育てる人へ」我が国に「ブリーダー直売」の文化が根付く事を期待せずにはおれない。 |