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ペットビジネス「血統書未着のトラブル」


犬猫を扱うペットビジネスでは、血統書に関するトラブルも多い。
「血統書の交付がないのは雑種だから代金を返せ。」などの要求を消費者から受ける事が少なくない。
そもそも、血統書に対する業界内の認識と消費者の認識とは大きく乖離している。
我が国では「血統書付き」と言う言葉が「高級」と言う意味に置きかえられ子犬が流通して来たいきさつがあり、「血統書」について正しくない認識を持つ愛犬家が多い。
俗に「血統書を見て犬を買う」と言われる状態が依然続いている。
又、ペットブームを背景に我が国には増殖家的繁殖家が多く、本来血統書の持つ役割りについての繁殖現場での認識とモラルが低い。
子犬の流通現場では高く売るために、「良い犬」である事の証明を血統書で行おうとする傾向が強く、血統書の申請から交付までの公正さには疑問点も多い。
血統書は不動産の謄本や車検証のように公的な書類ではない。
血統書を発行する事業は普通の商行為として誰でも自由に行えるもので、実際我が国には犬、猫の血統書を発行する団体がかなりの数あって、それぞれの団体間のデータの互換性がないのが普通である。

我が国では毎年50万頭以上の純粋種の子犬が産まれており、これらの子犬は普通「血統書付き」として売買される。
血統書に求められる役割りにこだわるならば、子犬の売買に際し血統書が提示され、売買と同時に子犬と共に交付されるべきであるが、数ヵ月後にやっと届くと言うのが実情のようである。
ほとんどのペットショップが子犬販売時に交付する書類には「血統書は数ヵ月先に渡す」旨が明記されており、この期限を過ぎてもなお血統書を受け取れない愛犬家からの苦情も日常的である。
愛犬雑誌の法律相談欄に定型的に見られる「血統書が来ない」と言う相談に対する答えも「購入後2〜3ヵ月は普通‥‥」と言うように現状を是認したものである。
多くのペットショップは血統書の交付が遅くなる理由を愛犬家に説明する際に「血統書団体の手続き‥‥」をあげる例がほとんどであるが、各血統書団体はもちろんこれを否定している。
異常な事態でもない限り、血統書は申請から1〜2週間もすれば交付されているからである。
この奇妙な事態の原因は繁殖元で産まれた子犬が複雑な流通経路と取引事情を経て愛犬家に届く事によるもので、この間の血統書のやりとりがスムーズでない事による、と説明せざるを得ない。
さらにペットの卸し業者や販売者は自分の仕入れルートや仕入価が後日判明する事を良しとしないため、仕入先が明らかになる可能性のある血統書の交付を嫌う事も一因となっている。 

そもそも業者レベルでの血統書に対する認識は愛犬家のそれとはきわめて異なっている。
ペットとして流通する犬に限って言えば、現状では血統書は販売以降、愛犬家の間でのみ重要な書類であると言える。
増殖的繁殖現場では、シーズンの到来した雌犬に複数の雄犬を交配する事は特に異例な事ではなく、この場合には血統書上の父親欄が何と記載されるのだろうか。
血統書団体も血統書発行に際し、出生に関する事実関係を積極的に確認するような仕組みにはなっていない。
血統書は「証明書」と言う名で呼ばれるが、血統書記載事項のすべてを詳読すれば、犬種や血統に関して発行団体は直接何も証明していない事が判る。
各血統書に共通するのはその記載事項が「団体の犬籍簿と同一」である事を証明すると言うものである。
さらに団体の犬籍簿は「申請者の申請書通り」に記載されると言う。
すなわち血統書の記載事項の信憑性については、どの血統書団体も言及しておらず、万が一不正な記載事項について追求されたとしても各団体が責任を認める事はない。
これらの経緯から、発行した血統書面に繁殖者の署名を求め、繁殖者自らが記載内容の真実を証明する形式のものまである。
そもそも、ある犬種の純粋性を証明するなどと言う事は何びとにもできる事ではなく、幾代にも渡る交配犬の特定についても、その時々の繁殖者以外の者が証明し得る事項ではない。
登録団体がコンピューターを導入する以前は、毎月子犬を産む雌犬や、死んでからも父親となる種雄の例が少なくなかった。

ペットビジネスの現場に於いては、血統書にまつわるトラブルは実に多く、避け難い。
繁殖者、流通業者のレベルに於ける血統書に関するモラルの向上は最重要な課題である。
血統書に関するトラブルが多発する場合には、生体の仕入れルートそのものに問題がある事に事業者は早目に気づくべきである。

業界人の証言。
「長年繁殖しているけど、血統書など見た事もないよ。血統書はショップが作っているんだよ。」
「何十匹もいるメス犬、オス犬も何匹もいるし、どうやって親を特定するんだい。犬に番号でも打ってあるかい?」
「血統書なくてもいいから、安い犬が欲しいって客よくいるよなあ。2000円引き、って言ってやるんさ。」
「ショップを長くやってると、死んだ犬の血統書がわんさとたまるから、どんな血統書でも作れるようになるよ。15年前の血統書だって、間で1回産ませりゃ使えるしね。」